「番屋」は本来、冬に人の引き上げた後、漁場を管理する必要から越年して滞在するための番小屋をいいました。これがのちに漁夫の寝泊りする漁場施設を指していうようになります。ニシン漁が盛んだった北海道西海岸一帯の漁村では、漁船や網を持って多くの漁夫を使う親方の住まいと漁夫の宿泊部を一棟の中に収め、豪放で機能性に徹した大型民家が「鰊番屋」と呼ばれて有名です。
机浜に現存する25棟の建築群は主に漁具の収納やワカメ、コンブの乾燥作業場を目的にしたもので、住居は時化や津波の被災から守るため、そして農耕や炭焼きをするために高低差約200メートルの高台に建てられました。その意味ではこの建築物は「納屋」と呼んだほうがふさわしいのですが、漁期で忙しくなると今でもこの施設に泊まりこみ、「番屋」としての機能も持ち合わせているのです。
「机」の地名はアイヌ語のツク・エツ(小山の・岬)が由来で、浜の周囲は北部陸中海岸特有の断崖絶壁が連なり景色がすばらしいところです。机漁港はウニ、アワビなど磯漁業の拠点として古くから利用されてきましたが、昭和43年度から漁港整備が行われ、さらに漁港と集落を結ぶ道路も整備されてからは利便性が向上しました。現在では磯漁業のほか、ワカメ、コンブの養殖が中心となっています。この環境整備で、漁具は車を利用し集落まで運搬できるようになり「納屋」としての機能も失われつつあります。
社会環境整備や車の普及、漁業後継者不足で番屋の遊休化、廃屋化が進み、急速に漁村文化が失われようとしていましたが、「机郷友クラブ」による保存・継承活動が元で、平成18年水産庁の「未来に残したい漁業漁村歴史文化財百選」に選ばれ、貴重な漁村の原風景をとどめる所となっております。
今後この文化遺産を継承し番屋群をどう活用するか共に考えてみませんか。
この活動への皆さまのご意見やご支援・ご協力をお願いいたします。お気軽に下記事務局までご連絡ください。